リーマンショックコンフィデンシャル/アンドリュー・ロス・ソーキン著
読書感想文~2,3冊目~
リーマンショックコンフィデンシャル
上巻「追い詰められた金融エリートたち」
下巻「倒れゆくウォール街の巨人」
TOO BIG TO FAIL
アンドリュー・ロス・ソーキン=著
加賀山卓朗 =訳
本記事は、「リーマンショックコンフィデンシャル」の読書感想文です。
この「リーマンショックコンフィデンシャル」は、NYタイムズの記者であるアンドリュー・ロス・ソーキンが数多の取材を下に書いたノンフィクションです。
元々、暴落に備えるためにリーマンショックの状況を知りたくて読み始めたのですが、読み終わる前にコロナショックが来てしまったというなんとも間が悪い本です(私個人的に)。
*多少のネタバレも含みます。
① 最高に質の高いヒューマンドラマ
もしも初めて本書を読んだとしたら、まず間違いなくノンフィクションの質の高さに驚くと思います。
私もそうでした。
本書には、リーマンショックがどのようにして起こり、どのようにして沈静化しようとしたのかが事細かに書かれています。
リーマンショックとはある種の失敗から生まれています。
そのため、リーマンショックを語る上で、登場人物の愚かさや葛藤など人間らしい部分を無視して書けるものではないのですが、本書では、まるでフィクションかと思うレベルで登場人物の考えや行動が綴られています。
それを可能にしたのはNYタイムズの記者であるアンドリュー・ロス・ソーキンの取材力であり、本書の謝辞中では、何百人もの協力を得て本書を書き上げたと言っています。
本書は、徹底した取材から生まれた最高に質の高いノンフィクションヒューマンドラマなのです。
② リーマンだけが救われなかった
本書を読む前は、当時の状況をよく知らず、「不景気でサブプライム・ローンを持ちすぎていたリーマン・ブラザーズが破綻したんでしょ?」くらいの認識しかありませんでした。
ただ、リーマン・ブラザーズだけが問題だったわけではなく、一連の問題の中でそれ以外の大企業も潰れかけていました。
順を追うと、ベア・スターンズ、ファニーメイ、フレディマック、リーマン・ブラザーズ、そして保険会社のAIG。
ここに上げた企業はリーマン・ブラザーズ以外何らかの形で米国政府に救済されました。
言い換えれば、リーマン・ブラザーズのみ救済されずに破綻したのです。
そして、リーマン・ブラザーズの破綻が更なる金融不安の引き金となり、リーマンショックと呼ばれる危機になりました。
ざっくり言うと「リーマン・ブラザーズがだめなら、金融系の企業全部潰れる可能性あるじゃん」ってなったわけで、最も有名な投資銀行の1つであるモルガン・スタンレーも危機的な状況に陥りました。
さて、そんなリーマンショックを登場人物の2人に触れて振り返りたいと思います。
③ リチャード・ファルドのバイアス
1人目はリーマン・ブラザーズのCEOのリチャード・ファルドです。
リーマンショック前の2007年度、リーマン・ブラザーズの総資産はだいたい70兆円でした。
そんな大企業のCEOだったリチャード・ファルドは、これまで幾多の危機も乗り越えてきたことへの自信、自分の育て上げた会社への愛情、従業員への責任感など多くのものを背負っていました。
が、ファルドのリーマン・ブラザーズは、2008年9月15日に64兆円の負債を抱えて破綻しました。
1年足らずで70兆円がマイナス64兆円です・・・。
もはや金額がでかすぎてよくわからないですが、例えばトヨタの総資産が約50兆円ですから、1年足らずでトヨタが2社あっても足りないほどの評価減があったということです。
ただ、リーマン・ブラザーズの財務健全性が疑われて70兆円がみるみる減っていった過程で、ファルドもただ手をこまねいていたわけではありません。
資金獲得のために融資の相談や他社へのリーマン・ブラザーズの資産の売り込みをしていきます。
ファルドには何度か資金を得るチャンスが有りましたが、その多くはファルドにとって魅力的ではなく、自ら断ってしまいます。
急落するリーマンの価値と、愛する会社に対してバイアスがかかったファルドの価値とではあまりにも大きな溝があったように思います。
結局、その溝が埋められず、遅きに失する形になってしまったわけです。
全てを失ったファルドは、午前二時過ぎに自宅に戻ります。
「終わりだ」「完全に終わった」
寝室にて寝ずに待っていた妻にこう繰り返しました。
④ ヘンリー・ポールソンの葛藤
2人目は第74代米国政府財務長官のヘンリー・ポールソンです。
ポールソンはゴールドマン・サックスの元CEOという金融バリバリの人物で、陣頭指揮をとって金融不安に立ち向かった人物です。
つまり、リーマン・ブラザーズは救わず、その他は救うという決断もポールソンがしたということです。
リーマン・ブラザーズを救わなかったことは、結果的に以降の金融危機の引き金となったわけなので、この判断を批判する人もいたようです。
ただ、ポールソンも無限にお金が使えたなら、有無を言わさず救っていたでしょう。
では、それが可能だったかというと、もちろんNOです。
当時の投資銀行はギャンブルのようなリスクを取って莫大な利益を上げており、その最たる例がリーマン・ブラザーズでした。
そのギャンブラー達が危なくなったからといって国のお金を投入して救うのか?
もし、救うとして、莫大な負債を現実的にどうやって救うのか?
その葛藤の中、ベア・スターンズ、ファニーメイ、フレディマック、リーマン・ブラザーズ、AIG、モルガン・スタンレーと危機の対象が移っていきました。
その度に新しい時限爆弾のタイマーがセットされるのです。
爆発すれば全世界の経済に深刻なダメージを与えかねない爆弾を横目に、ポールソンは決断を迫られ続けました。
全てが正しい選択ではなかったかもしれません。
しかし、彼が血反吐を吐きながら救済の道を模索し続けた結果、今日の米国経済があるのかもしれません。
因みに、本書中でポールソンは実際に血は吐いていませんが、ゲロは吐いてました(多分2回)。
⑤ 所感
本書を読んでいる時、私は登場人物がどの組織に属し、どういう関係性を持っているのか把握するのに苦労しました。
巻末に「登場人物/組織一覧」がありますが、逐一見ながら読んでいました(数えてないですが100名以上の名前が載っています)。
リーマンショックを舞台にした複雑なヒューマンドラマが新鮮な状態で書き残してあるわけですから、それも仕方ないと思います。
一方、経済・金融についてはそれ程詳しくなくても、面白く読めるのではないかと思っています。
リーマンショックという歴史的な大問題の渦中にいた人たちの戦いの記録です。
機会があれば、読んでみてください。
さて、当時の米国大統領はジョージ・ブッシュであり、財務長官はポールソンでした。
ブッシュは殆どポールソンの力になれず、正直に言うとほぼ空気でした(本書を読んだ印象です)。
大統領が空気でも、すべての政策が正解ではなくとも、米国経済はリーマンショックを乗り越え、大きく発展しました。
コロナショックが来た2020年の大統領はドナルド・トランプであり、財務長官はムニューシンです。
今回は大統領のトランプが前面に出て、強力に経済政策を打ち出しています。
そして、リーマンショックは後手に回っていましたが、その反省から先手を打っているようです(トランプは米中貿易戦争の頃からその気があると思います)。
現在、世界中の都市がロックダウンされており、日本でも全国に緊急事態宣言が拡大される非常に不安な状況です。
リーマンショックと同様に、コロナショックという難しい問題も人類は乗り越え、その先に明るい未来があることを期待しております。
それでは。
リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
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【禁酒ファンド-2】2020年4月積立実績(2月禁酒分)
自他ともに認めるお酒好きの筆者は、お酒を我慢した日にお酒代の200円で「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」を購入するという成果見える化型の減酒法を実施しています。
「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」は世界経済に連動することを目的としたインデックスファンドです。
お酒の代わりにこの「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」を買うということは、言い換えれば、消えるはずだったお酒代が世界経済の成長に比例してみるみる増えていくということなのです。
目標は20日/1ヶ月であり、積立額にして4,000円/月です。
小さい額ですが、老後の海外旅行資金にはなるだろうと確信しています。
さて、2月の禁酒成果ですが、こちらです。
(ジャン)
17日/29日にて3,400円(受渡金額のところ)!
正直な感想として、
「おれ結構頑張ったよ?目標の4,000円なんて無理なんじゃないの?」
って感じです(逆ギレ)。
・・・それでは評価額です。
(ジャン)
トータルリターンに-240円と書いているので危うく騙されるところでしたが、お酒代として消えるはずのお金が積み上がっている状態ですので、純粋に評価額分の4,760円がプラスという超絶大幅プラス状態ですね!
よっしゃ!
4月もがんばろ!
(ちなみに3月の禁酒も17日で積立ては3,400円でした・・・)
そして、最後に。
インデックス投資をやる上で、株価を気にしたり、タイミングを見計らったりすることは賢い方法ではないと言われています。
筆者は禁酒ファンドとして「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」を保有しているため、毎月設定変更していますが、本来インデックス投資にこまめな設定変更は不要なのです。
ご注意ください。
それでは。
大治郎 純米吟醸 迷酒/畑酒造【日本酒備忘録1本目】
新型コロナのせいで、外出しづらく、お酒の消費量が少し増えております。
さて、そんな昨今、畑酒造さんの「大治郎 純米吟醸 迷酒(まよいみず)」を飲みました。
2020BYの生酒です。
色んな温度で試してみましたが、とても美味しく面白い日本酒でした。
特に冷やして飲んだときの酸と甘さがすごく印象的でした。
※この備忘録は日本酒の出来を評価するものではなく、日本酒大好きな筆者の勝手な感想です。
品名 :大治郎 純米吟醸 迷酒
精米歩合 :55%
アルコール度 :17度
製造者 :畑酒造有限会社
価格 :1,760円(税込)/720 ml
おすすめポイント :冷やして飲んだときのしっかりとした甘みと酸味
冷やして飲んだら?
口に入れて程なく、しっかりとした甘さと酸さがじんわりと広がる日本酒です。
甘さと酸はパンチのある部類なので、食中酒でもいいですがお酒単体で楽しめるタイプかと思います。
口の中で少し転がすと、よりそれらを感じることができると思います。
パンチのある反面、山田錦を使用しているのが効いているのか、くどい雑味が後に残ることもないのでドンドンいけます。
名前の通り、終わりにしようと思っていても、もう一杯飲むか迷ってしまうような日本酒ですね笑
すこし温めたら?
米感は冷えてるときより強くなって面白いのですが、同時にアルコールも強くなるためか、甘さと酸が弱くなります。
美味しいですが、冷えた状態で楽しむ方がこのお酒の良さが活きる気がします。
レンジで暖めると?
熱くなりすぎるとこのお酒の良さの1つの甘い酸は消えちゃいます。
ただ、それも米の穏やかさを感じてありっちゃありです。
加熱後に少し温度が下がると酸も復活します。
一度温度が上がってアルコールが飛ぶので、酸が際立っておりワンチャン有り(?)かもです。
畑酒造さんにお邪魔して買ってきた
実はこの「大治郎 純米吟醸 迷酒」ですが、ちょっと前に飲んだ畑酒造さんの「よび酒(みず)」がとても美味しかったので、気になっておりました。
「よび酒」は吟吹雪の精米歩合60%の生酒なので、山田錦の55%の生酒の「迷酒」と比べると綺麗さは劣る代わりに複雑味と力強さがある美味しいお酒でした。
というわけで、畑酒造さんの近くを通ったときに足を伸ばして行ってきました。
入口から入ると、酒瓶が並べてあり、運転者でなければ試飲させてくれます。
因みに奥に見えている杉玉は 自家製らしく、毎年枝を取りに行くところから作っているそうです。
なんか、The日本酒って感じで粋ですね!
どちらの日本酒も美味しいので出会ったら是非試してみてください。
それでは。
ほぼ全ての個別株を売りました②/今後の対応
「ほぼ全ての個別株を売りました①/新型コロナへの敗北 」で書いたように、暴落からの戻りがあった3/27にほぼ全ての個別株を売却しました(年初来マイナス、ちょっと含み益状態)。
ただ、これは完全撤退ではなく、一時撤退です。
一時撤退した理由の1つ目は、「ほぼ全ての個別株を売りました①/新型コロナへの敗北 」に書いたように反省も込めてのポジション解消でした。
戦略的に選択しての売却ではなく、一度リセットする意味でポジションをほぼ全部解消しました。
2つ目の理由は、資金が限られている弱小投資家として、今後の相場に対応するためです。
本記事では、2つ目の理由をメインに書きたいと思います。
2番底を想定
権利付き最終日の3/27に配当金を捨てて一時撤退したのは、これからまた下に行くと思っていたからです。
直近の底値が、3/19の16,552円。
底値を割るかはわかりませんが、下に行ったときに段階的に買い下がるために、ポジションを解消してキャッシュにしました。
もし上に行ったときは、投資信託は持っているので、個別株は諦めることとしました。
想定するリスク要因
現在、私が把握している大きなリスクは2つです。
一気にきていますが、この2つは別物です。
本当に最悪のケースとして、前者は世界経済の停止による韓国やイタリアレベルの国家のデフォルト、後者は原油国を中心とした第三次世界大戦かなと思います。
おそらくそこまではないと思いますが、その数歩手前くらいまでは有り得る話だと思います。
特に、新型コロナが長期化しそうな気配があるので3番底も見据えた資金管理をしていきます。
逆に上がる要因はある?
もちろん、一番の上がる要因は新型コロナに対する特効薬、ワクチンの開発です。
ただし、特効薬なんてそう簡単に短時間でできるものではなく、現実的にはアビガンなど既存薬の有効性証明かと思います。
そして、各国のロックダウンによる感染スピードの鈍化も材料になるかもしれません。
あと、原油安の方は産油国の喧嘩による協調減産破棄が原因なので、経済に大きく影響する前に仲直りからの協調減産再開がベストシナリオです。
今現在、世界各国による金融緩和で世界中にお金が溢れつつあります。
リスクオフなので株は下がっていますが、ポジティブなニュースが出たら一気に吹き上がることも有り得ます。
2019年末にバブルバブル言っている人がいましたが、全然違いました。
特に日本は指標的にそこまで割高でもない状況でした。
しかし、今回はこの金融緩和マネーがあるので、何もかもうまく行けば爆上げからの本当のバブルが来る可能性があります。
つまり、上か下かどっちに行くかわからないということです笑
筆者はどうするか
今の所、日経平均が17,000円を割る頃にエントリーするつもりです。
ただし、5月上旬くらいまでは下目線だと思っています。
絶対の根拠はなく、「ほぼ全ての個別株を売りました①/新型コロナへの敗北 」で書いたとおり思い込みはダメですが、3月末決算の企業の業績が出揃い始めるのがこの頃です。
更に、1~3月期の四半期GDPの1次速報が5/18予定です。
これらの日付には新型コロナによる経済的ダメージが明確になり、経済指標も更新されますので、その前くらいに二番底をつける気がします。
なので、ここから1ヶ月程度で17,000円以下になるのをじっくりと待ちながら、買うときも少しずつ買うということにしていきたいです。
因みに「リスク要因」で書いたようなことが起これば、ここから更に大暴落もあり得る気もします。
「リスク要因」に書いたようなことが起こるにはもっと時間がかかると思うので、爆上げは取りたいですが、乗り遅れてもしょうがないという割り切った気持ちで資金管理は徹底していきます。
投資信託はどうしたか
我が家には、私と妻の2つの積立NISA口座があり、投資信託を購入しています。
しかし、2019年はNISA枠を満額使っていませんでした。
株価が高いと思っていたからです。
しかし、今回の暴落で、満額設定に変更しました。
加えて、特定口座でも買い増しを始めました。
更に、会社でやっている企業型確定拠出年金もキャッシュでキープだったものを株に変更しました。
長期目線であれば、下落時こそ買うべきです!
下落時に個別株のリスクが読みきれない私のような素人は、指数連動型の投資信託を買えばいいのです。
なお、積立とは本来タイミングを見てコロコロ設定を変更することは、パフォーマンスを下げると言われています。
筆者は遊び心でやっているだけなので、ご注意ください。
まとめ
日経平均が17,000円を割ったら個別株にゆっくりエントリー。買い下がる。
爆上げしない限り投資信託は買い増し。
それでは。
ほぼ全ての個別株を売りました①/新型コロナへの敗北
昨年~年始に購入した個別株を多少持っていた私。
例にもれず、日経平均が底値になった3月中頃には大きな含み損を抱えていました。
そんな中、売却せずに戻り待ちをしておりましたが、16,000円台から19,000円台まで戻った3月27日(金)にほぼ全ての株を売却しました。
3月27日は権利付き最終日でしたが、配当は捨ててほぼ全て売却しました。
今回の暴落は、精神衛生に非常に悪い日々だった代わりに多くの教訓をくれました。
今回の売却の動機は、今後の相場へのリスク管理という意味もありますが、新型コロナを甘く見ていて思い込みが過ぎたことへの自省としての意味合いが強いです。
ということで、個別株をほぼ売った動機を記録しておこうと思います。
ここまでの流れ
2020年1月に新型コロナが中国で流行したことがニュースになった頃、正直「また中国が変なことしてるよ」程度の対岸の火事状態でした。
2月にダイヤモンド・プリンセス号のニュースが出てもそれほど危機感はなく、2月末に21,000円台まで下落しても「はいはい、どうせ一時的でしょ」と思っていました。
3月上旬に20,000円を割った時「あれ、これやばい・・・?」ってなってからはあまりの下落スピードに半分思考停止状態でした。
いつリバウンドしてもおかしくないという心理から動くに動けない状態でした。
そして、まだ下落するかもという恐怖から底で入ることもできず、リバウンド待ちをして3月27日に19,000円台で売却しました。
今考えれば、「あれ、これやばい・・・?」で売っておけばよかったわけですね。
ここまで危機感なく対応が遅れてしまった理由は2点あります。
新型コロナを一時的と思い込み
1点目が新型コロナを甘く見ていたことです。
「新型コロナなんて死亡率も高くないし、インフルエンザに毛が生えた程度でしょ?そもそも米国なんてインフルエンザで毎年数万人死んでるんだよ?日本でも毎年数千人死んでるし。中国で新型コロナで数千人死のうが、インフルエンザと比べて圧倒的に脅威なわけじゃないでしょ?」という思い込みがありました。
もちろん、世界中でロックダウンが実施されるなんて思ってもいませんでしたし、当時そう主張する人がいたら「大げさな!」と一笑に付していたでしょう。
また、米国株が割高圏にあったこともあり、「市場的は丁度よい調整の場を探していたんだ!新型コロナが無くても下げてたかもね」なんてアナリストでもないのに変な自信がありました。
今思うと本当に馬鹿ですね・・・。
自分勝手に思い込んで、何様になったつもりでしょうか・・・。
無駄にリーマンショックと比較
2点目がリーマンショックと比べてしまったことです。
当たり前ですが、今回のコロナショックとリーマンショックは大きく違います。
リーマンショックの恐ろしかったところは、莫大な価値があると信じていた金融商品の価値が日に日に底なしに下落していったことです。
その中心のリーマン・ブラザーズは物凄い惨状で、2007年11月末に70兆円以上あった総資産が、破綻した2008年9月15日には60兆円以上の負債になっていました。
1年経たずにプラス70兆円がマイナス60兆円ですよ!?
総資産の殆どが金融商品のはずですから、この暴落の中では全ての金融商品がガラクタ以下に見えても不思議はないでしょうね。
金融危機という文字通り、それこそ世界の金融市場が無価値になる一歩手前でした。
それと比べると、ロックダウン前、新型コロナは私にとって一感染症であり、インフルエンザ程度の認識でしかありませんでした。
そりゃあもう、「リーマンショックのような危機にはなるはずがない!」と思い込んでいましたよ。
結果、ロックダウンによる実体経済へのダメージというリーマンショックとは違うベクトルで大きな危機になりつつあります。
思い込みはあるけど、リスクは想定していなかった
以上2点のように、今回の暴落では思い込みが傷口を広げる結果となりました。
また、持っていた株は、中長期投資だから多少下落しても良いという気持ちもありましたが、多少という基準が曖昧であり、「ここまで下がったら売る」というような悪い想定をしていませんでした。
逆に「配当金狙いで一生持ち続ける」というような気概もありませんでした。
曖昧な基準、何となくの投資をリセットするために、自省の意味も込めてほとんどの個別株を売却しました。
これからは、購入時点で明確な方向性を持って購入していこうと思います。
また、相場を思い込みで見ると痛い目に合うこともわかりました。
反省です。
今後とかについて
あ、ちなみにこの暴落で投資信託は一切売っていません。
投資信託の売却は20年後とかでいいと思っているので、寧ろ積立額を増やすよう設定変更しています。
本来、資産形成という意味の投資はこうやってやるべきですね。
そして、対応の不味さは反省はしておりますが、年初来こそマイナスなもののお小遣い程度の含み益を抱えてのポジション解消です。
損切りはできずダメでしたが、投げ売りはしなかったことは結果的に成功ということでしょうか。
年初来からのマイナスは勉強代として受け入れることとします。
・・・そして、ポジション解消の何よりのメリットはストレスが解消されたことです笑
あれほど下落がストレスだったのに、今は寧ろ暴落待ちです。
ただ、今世界中金融緩和で資金が有り余っているはずなので、この危機が和らいだときにはバブルに突入する可能性もあります。
今度、入る場所は十分に引きつけた上で虎視眈々と狙っていきます。
それでは。
無関心の証明の「和牛券」/新型コロナの経済対策
新型コロナウィルスが世界中で猛威を奮っており、各地で都市封鎖(ロックダウン)が実施されています。
停止している世界経済を崩壊させないために対策が急がれており、27日には米国で2兆2,000億ドル規模の新型コロナウイルス関連経済対策法案が可決しました。
一方、日本ではまだ具体策は実施されておらず、「和牛券」といった信じがたいキーワードも聞こえてきました。
この現状を政治家だけのせいにしていいのでしょうか?
私は政治も経済もまだまだ勉強中・・・。
というか最近見始めたばかりなのですが、今回の新型コロナの件で、先日読んだ「父が娘に語る経済の話。」での著者ヤニス・バルファキスの主張の重要性を痛感しています。
ヤニス・バルファキスは「(政治とも密接する)経済というものは私達の生活レベルに大きく関係する。だから、専門家だけが机上の空論で方向性を決めるのは恐ろしいことで、我々全員が理解して決めていかなくてはいけない」と言っていました。
ヤニス・バルファキスの主張は、今回のような緊急的な状況にこそ発揮されるべきことだと思います。
逆に言うと、このタイミングで「和牛券」なんて言葉が出てくるのは、私達が政治・経済に無関心を貫いたことの証明ではないのでしょうか。
父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。 [ ヤニス・バルファキス ] 価格:1,650円 |
そもそも、新型コロナが広がる前から、日本では消費増税により10~12月のGDPは年率換算で7.1%下落していました。
新型コロナによる世界の経済後退懸念とは別に、日本は経済後退懸念があったということです。
これらはタイミングが同じだけで事象としては別です。
本当に最悪なタイミングでの増税ですね。
更に、新型コロナが解決しても消費税は続くわけですから、真綿で首を絞めるように日本の経済を細めていく気がします。
さて、消費増税含め緊縮財政を進めてきた日本ですが、先進国での経済的な立ち位置はどんな感じなんでしょうか。
日本は世界3位のGDPを誇る経済大国ですが、比較のため、20年間のG7の実質GDPを集計してみました。
図からわかるように、成長率としては景気停滞中のイタリアに次いで下から2番目です。
先進国のみ比較するために入れていない中国、インド、韓国、ブラジルなどの新興国はもちろん右肩上がりです。
日本はこのままで大丈夫でしょうか?
私は大丈夫ではないけど、まだ間に合うと思います。
間に合わすためには、私達が政治・経済を自身のこととして真剣に考える必要があります。
今回の新型コロナで日本の悪いところも見えた一方、特有の強さも見えました。
「衛生観念が高いからか新型コロナの蔓延が遅かったり」、「上場企業は内部留保がたくさんあり不況への耐性があったり」といったところです。
少なくとも、この2つの強さは日本人の気質的な部分と深く関係しているような気がします。
まだまだ、国としても力もあり、捨てたものではないと思います。
私も勉強中のため偉そうなことは言えませんが、今回のことを機に一緒に政治・経済を真剣に考えてみませんか?
そして、行く行くは国の正しい方向性を主張していかなくてはいけません。
今回に関しては、プライマリーバランスがどうとか言っている場合ではなく国際を発行し、まず新型コロナの損失補填をして、そして、中長期的には消費減税をしてほしいものです。
それでは。
娘と世界中の人々に宛てた未来をより良くするためのヒント「父が娘に語る経済の話。」/ヤニス・バルファキス
読書感想文~1冊目~
父が娘に語る
美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい
経済の話。
ヤニス・バルファキス=著
関 美和=訳
先日、ヤニス・バルファキス著の「父が娘に語る経済の話。」を読みました。
「美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい」と題名につけて、自ら煽っていくスタイルのこの本ですが、父が十代の娘に向けて書いた本です。
「パパ、どうして世の中にはこんなに格差があるの?人間ってばかなの?」(原文ママ)という娘の疑問に回答するため、経済について噛み砕いて説明していきます。
この本は娘に語るという形式をとっていますが、その実、全世界の人に充てられた「未来をより良くするためのヒント」だと思います。
因みにヤニスさんはギリシャ経済危機のときの財務大臣で、個人的にショッピングモールを忌み嫌っています。
① 超ざっくりとした内容
冒頭で触れたように、本書は娘の「どうして世の中にはこんなに格差があるの?」という疑問からスタートします。
この純粋な疑問、難しいですよね。
「頑張って働いている人と怠けている人がいるから」とか単純な理由なら救われるのですが、実際そうではないです。
家系、地域、国・・・。
残念ながら、生まれたときから貧富はあるわけです。
では、何故そんな仕組みになっているのか。
それを説明するために、ヤニスさんはまずイギリスがアボリジニを侵略できた理由を語ります。
イギリスがアボリジニを侵略できた理由は、豊かな自然に恵まれたオーストラリアに比べ、イギリスは食料に苦労する土地だったためだとヤニスさんは言います。
どういうことかと言うと、イギリスで多くの人々が暮らそうとすると、狩猟だけでは足りず、農耕をせざるを得ません。
農耕をしていると凶作や台風などの災害などで食料が得られないことがあるため、将来に備えて農作物を蓄えるようになります。
この蓄え、つまり「余剰」が社会の発展の大きばポイントになります。
ある共同生活単位で「余剰」を管理しようと共有の倉庫を用いたとすると、誰がどれだけ蓄えがあるかを記録する文字が必要になります。
そして、文字により記録した「余剰」を他者とスムーズに交換するために、通貨などの経済的な概念が生まれます。
そして、通貨の価値を保つためにはそれを保証してくれる大きな力、つまり国家が必要になります。
その国家を守り、運営していくために、軍隊や法律や宗教などが生まれます。
このように農耕から生まれた「余剰」を起点として、イギリスのような国家が生まれていったのです。
逆に豊かな自然を持つため農耕の必要がなく、「余剰」が生まれなかったアボリジニでは、国家や軍隊は成熟せず、イギリスの侵略を許す結果となってしまいました。
つまり、イギリスがアボリジニを侵略できた理由は、「余剰」が生まれたか否かにあった、とヤニスさんは言います。
このように本書では、時には歴史、時にはフランケンシュタインのような小説、時にはマトリックスのような映画など身近なもの・理解しやすいものを題材に「社会、経済がどのように作られてきたかという過去の話」、そして、「これからの未来、言い換えれば、ヤニスさんの娘が生きていく時代についての話」が展開されていきます。
② ヤニスさんが期待したこと
イギリスとアボリジニの話で出てきた「余剰」が生む格差というのは過去の話ではありません。
現代においても、例えば、多くの富を持った一部の人が素晴らしい機械を買って、その所有者のみに多くの富を生み出すという構造になっています。
格差の質問をしたヤニス娘も一部の人が豊かである不条理を感じていたに違いありませんが、本書でヤニスさんはその不条理な社会構造を説明してきます。
ヤニスさんが本書中で語る諸問題(「格差社会」や「自然破壊も厭わない経済至上主義」など)は非常に大きな問題であり、正直一人の人間にどうにかなるレベルではないように感じます。
では、ヤニスさんは本書を通してどんな期待をしたのでしょうか。
私は2つの期待を感じました。
1つ目は、娘に「社会を知り、経済を知り、自分の正しいと思うことを主張し、実行できる人間になって欲しい」ということ。
ヤニスさんは、アイスクリーム1つ買うにしても環境や社会問題に真摯な会社の商品を選んだ場合、それは1つの主張だと言っています。
ただし、アイスクリームを買って企業を支援するというのはあまりに社会的なインパクトに欠けます。
インパクトを出す方法として示唆されているのは、「(A)いっぱい買うことができるお金を持つこと」と「(B)みんなでやること」です。
ヤニスさんは「(B)みんなでやること」を推奨しているフシがあり、現に本書中には続編を娘に書くように軽めに促す場面もあります。
ヤニスさんは娘が社会を変える先導役になることも少し期待しているのではないでしょうか。
そして、2つ目の期待は、娘と同じ時代を生きる世界中の人々の意識を変えることです。
本書は娘への語りかけという形式をとっていますが、提示された解決すべき課題は一人の人間が同行できるレベルではなく、あまりにも大きく根深いのです。
つまり、行動してほしいのは娘だけではないはずです。
娘と同じ時代を生きる人間全てに伝えたいはずで、それが世界をいい方向へ進めると信じているのです(たぶん)。
父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。 [ ヤニス・バルファキス ] 価格:1,650円 |
③ 【考察】お金という変動する価値
本書の中で、第2次世界大戦中のドイツの収容所でタバコが通貨になった話が出てきます。
収容所には、定期的に外から「タバコ、紅茶、コーヒー、チョコレート」といった物資が囚人たちに届けられます。
出身国の違う囚人たちは好みが異なり、コーヒーは飲まないけど、紅茶が好きだったり、その逆だったりします。
そうするとどうでしょう、普通に交換しますよね?
ここで、イギリスの話で出てきたように、スムーズに物々交換をするために、通貨が生まれます。
その通貨となったのが、携帯に便利で好む人が多いタバコでした。
しかし、通貨としてのタバコの価値は日々変動します。
例えば、届いた物資の中にタバコが多くコーヒーが少ないと、コーヒーの価値が相対的に上がり、タバコの価値は下がります。
また、近くで空爆が起こると、不安からタバコの消費量が多くなり、タバコの価値は上がったそうです。
そして、解放が近いことを知った囚人たちは、タバコを貯める必要が無くなり、タバコは通貨としての機能を失っていきます。
最終的に、アメリカ軍により解放された瞬間、タバコを通貨としたささやかな経済システムは崩壊します。
この話の面白い点は、収容所という閉鎖空間で通貨が生まれて崩壊したこともさることながら、通貨の受給による価値変動がはっきりとわかる点だと思います。
皆が欲しければ通貨の価値は上がり、必要としなければ下がるわけです。
この受給による価値変動は我々の生活でも起こっており、現に為替は絶えず変動しております。
通貨の価値が一定ではないというこの事実を理解することは、リスクヘッジのために資産を分散することの意味を知ることかと思います。
平たく言うと、現金だけを持つよりも投資したほうがいいという意味です。
④ 【考察】日本の消費税増税は何故ダメだったのか
御存知の通り、日本では2019年10月から消費増税がされていますが、これについて考えさせられるのが本書の「予言は自己成就する」の部分です。
ここでは「オイディプス王」という戯曲が紹介されます。
この戯曲では2つの予言がオイディプスの人生を大きく変えています。
1つ目はオイディプスが生まれる前にされた「オイディプスが父を殺す」という予言。
この予言により、テーバイという国の王子として生きていくはずだった赤ん坊のオイディプスは、召使いにより山に捨てられてしまいます。
2つ目は紆余曲折を経て他国の王の養子となったオイディプスにされた「オイディプスは母と結婚する」という予言。
この予言を恐れたオイディプスは失意の旅に出ます。
その旅の途中、テーバイを通りかかったオイディプスは偶然実の父に会い、道を譲る譲らないというどうしようもない諍いから父を殺し、1つ目の予言を実現させてしまいます。
更に、何故か怪物からテーバイを救ったオイディプスは、救世主としてテーバイの国王となります。
そして、習慣に基づき、前国王の未亡人つまり母と結婚することとなり、2つ目の予言を実現します。
1つ目の予言がなければオイディプスは捨てられることもなく平和に暮らしたかもしれませんし、2つ目の予言がなければ失意の旅に出ることもなかったでしょう。
この戯曲では、運命の皮肉的さを語っていますが、ヤニスさん曰くこの予言の力はマーケットでも発揮されます。
景気があまり良くない中での消費増税で例えるとこんな感じかと思います。
「景気があまり良くないと思っているところに消費増税がされる」→「多くの人が消費が抑えられて経済成長の妨げになると考える(予言する)」→「実際に個人は消費を抑えたり(=国内消費が減る)、不景気に備えて経営者は人件費を削る(消費者に渡るお金が減る)」→「実際に経済成長が妨げられる」
実際に日本がこうなるかはまだわかりませんが、シンプルで理解しやすい連想ゲームではないでしょうか。
なお、私の景況感的には、現在のコロナと原油下落による株価下落は一時的で、年末にかけて上昇に転ずると楽観しています(怖いのでちょっとしか株は追加していませんが・・・)。
⑤ 所感
本書中に明記はなかったと思いますが、ヤニスさんはこのままでは未来が悪い方向に向かうと思っているように感じます。
ヤニスさんにとって、その未来を生きていくのは娘なわけです。
つまり、未来をより良くするということは娘を幸せにすることに他ならないのです。
物事を改善するためには問題点を正しく認識しなくてはいけません。
そのため、本書では社会を負の部分も含めて丁寧にわかりやすく説明しています。
私はというと、これまでSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)など、社会・環境問題で掲げられている言葉にあまり意義を感じていませんでした。
しかし、本書を読んで、社会をより良くしようという動きの重要さを学びました。
ただ、私一人ではダメで、みんなが認識する必要があるのです。
このブログでは伝えきれていないことも多いため、是非本書を手にとってみてください。
それでは。
父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。 [ ヤニス・バルファキス ] 価格:1,650円 |